2016年9月14日水曜日

【面談後追加質問報告】8月19日付「7月付要請文に関蓮する追加的質問について」のTPP政府対策本部との面談概要報告

2016年9月6日(火)

8月19日付け「7月付要請文に関蓮する追加的質問について」のTPP政府対策本部との面談概要報告

「TPPに反対する人々の運動」世話人:近藤康男(文責)

〇日時:2016年8月19日(金)14時半~15時半
〇場所:内閣府会議室
当日は、上記の出席者により、7月14日に送付の「TPP交渉及び審議・検討における透明性」に関する再要請における情報公開、政府説明会・対話の実施、パブリックコメントの実施、保秘義務契約についての回答(以上の要請文書は別紙の通り)、及び8月19日付「追加質問」における「規制の整合性」章と「国有企業及び指定独占企業」章の"情報公開に“に係る点について説明を受けると共に意見交換を行いました。そして一定の回答を得たので概要を以下の通り報告します。

なお、7月14日に送付の「TPP交渉及び審議・検討における透明性」に関する再要請に関連する意見交換については本報告では割愛し、別途事務局団体AMネットから報告をする予定であることを申し添えます。

1.規制の整合性の対象規制措置を、当該章の3条の「協定発効後1年以内」ではなく速
やかに公表することについて


(TPP政府対策本部説明)
〇「規制の整合性」は、国内法における相互の整合性について日本政府が措置するもので
あり、国際間・海外の対象規制措置との間の整合性のために締約国との間で決めるもの
ではない
ので、「追加質問」における懸念は考えられないと理解して欲しい。


2.規制対象となる国有企業の企業名を当章の10条「協定発効後6ヶ月以内」でなく速やかに公表することについて

(TPP政府対策本部説明)
〇3月15日付けの緒方林太郎衆議院議員による4点の質問主意書に対し、3月29日付の答弁書の中で11社を示しており、かつTPP協定における「定義」との関連において現在該当する事業体は以上の11社だけであること、他の事業体がその後の組織改編などで、TPP協定における国有企業・指定独占企業に該当することとならない限り、これがすべてである。(別紙主意書・答弁書最下段参照)


3.その後、9月1日に本報告書の作成者から「国有企業章」について3点を確認・質問したところ、矢田参事官より以下の説明・回答を得た。

(1)規制対象となる事業体の選定は、"定義“との関連での条件に係る変化が生じない限り、完了したと理解してよいか?

(TPP政府対策本部説明)
〇その通りである。

(2)規制対象企業の選定は各参加国の合意があった上でされるものなのか?

(TPP政府対策本部説明)
日本政府から通報することで、協定上は充分であり、協議・合意を受けて今回の公表がされている訳ではない。


(3)協定参加国から、対象とすべき国有企業について異論が出た場合などには小委員会などの場での協議を通じた合意が必要となることもあるのではないか?


(TPP政府対策本部説明)
〇(28章の国家間)紛争解決も含め、そういうこともあり得る。


(4)附属書Ⅳにおける、米国を含む10ヶ国による「留保」の内容・企業数・その分野の多いことと比べ、日本政府において「留保」対象企業がゼロであることの違いは余りに目立つと言わざるを得ないが、それは何故なのか?

(TPP政府対策本部説明)
日本の事業体が11社を除きTPP協定の「国有企業章」の規制対象とならず、11社についても「留保すべき」実態(利害)が無いためである。


4.更に9月6日に、8月19日の「規制の整合性章」についてのTPP政府対策本部の説明について、改めて電話で確認を求めたところ、以下の回答を得た。


(1)事前に送付した、本報告書作成者からのメールの概要は次の通り。

〇5章の各条項をあらためて読み込んでみると、
「28章紛争解決」の不適用(11条)、規制措置を定め実施する主権的権利(2条)、対象規制措置策定のための調整・見直しを円滑にするための国内の調整機関の設置(4条)の仕組みを通じて策定され、また規制に関する締約国の取り組み方法が個別的なものとなり得る(5条)こと、が規定されているものの、

〇一般規定の内容や目的(2条)、小委員会(6条)の機能、締約国利害関係者の関与(8条)、実施の通報及び関連する同9条2項の様々な規律(9条)などを通じ、

〇やはり、締約国全体の規制を出来るだけ同様の水準・内容に“収斂していく枠組み”が「規制の整合性」であり、国内・締約国間・各締約国の規制措置の“整合性を追求”するものである、
と理解するのが妥当ではないのか?



(TPP政府対策本部説明)
〇小委員会の設置・機能(6条)、利害関係者の関与(8条)、良い慣行の奨励(5条)、実施の通報(9条)を通じた情報提供・改善・小委員会における検討(9条2~3項)などが推奨されあるいは枠組みとなっているが、あくまで締約国各々の規制について規制措置を定める主権的権利、公共政策を達成する上での規制の役割などの重要性を明確に確認し(2条2項)、自国の規制に関する取り組み方法が個別的なものとなり得ることを認めているなど、各国の規制を同様の水準・内容にすることを規律とするものではない。

また、国家間の紛争解決に関する28章についても不適用としている。



あくまで情報公開を切り口としての質問から始まった面談・質問の機会であるため、“評価”の議論に入ることは避けたが、以下に報告者の個人的な評価を記すこととする。

協定交渉の終盤まで争点の残った「国有企業章」、比較的早期に合意したと言われる「規制の整合性章」であるが、共に“先進国”と“途上国”の利害が大きく異なり、かつ実質的にTPPで初めて登場した分野である。

このため、曖昧さや妥協を多く含んだ、(“霞が関文学”ならぬ)“TPP文学”満載の章となっているとも言える。

規制対象の国有企業(指定独占企業)は11社のみとして明らかにされたが、事業・経営の実態がこれらに類似し、定義上も規制の対象となり得る事業体は他にも相当数ある。

つまり他の締約国との間で争点となり得る事例の存在は否定できないし、一方で国民の暮らしと地域の立場からその存立を欠かすことが出来ない事業体も、附属書Ⅳの留保対象として全く載せられていない点は、他の締約国と著しく異なっている。


規制の整合性についても、日本が交渉参加する以前の米国のTPPのための企業連合の文書や米日協議会に宛てた文書、NZの主張は、あくまでグロ-バルに包括的な規制体系を求める点にあった。そしてそのような主張や“仕掛け”も合意内容には相当に含まれている。

また、(国際公約でないとしているものの)「保険等の非関税措置に関する日本国政府と米合衆国政府との間の書簡」の内容は、あたかも“国家間紛争解決章”の不適用に替わり、締約国間の規制を整合化するかのような内容となっている。この点で日本にとっても多くの途上国にとっても非常に重要でかつ問題の多い章と考える。


最後に、以下の別紙で質問をした“保秘義務契約”の対象には、規制対象の国有企業名、“対象規制措置の範囲”は含まれないこともこの間のやり取りの中で明らかにされたとものと考える。



(参考別紙:8月19日付“追加的質問”)
2016年8月19日(金)
内閣府TPP政府対策本部御中
市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会
「TPPに反対する人々の運動」:近藤康男

7月付要請文に関連する追加的質問について

本日の面談は、主として「情報公開」に関するものと理解します。従って、「情報公開」という観点で下記の通り追加的質問をさせていただきます。直前の質問ではありますが、19日の面談の機会に回答いただければ幸いです。



1.25章「規制の整合性」3条:対象規制措置の範囲
「各締約国は、協定発効後一年以内に自国の対象規制措置の範囲を決定し公表する」とし
ている。

〇国会審議開始前に公表すべきと考えますが如何ですか?
・この章は新たな分野横断的な章で、かつTPPの基本の一つです。対象規制措置が不明なまま審議・批准を求めるのは立法府を無視したものと思います。
あるいは国会議員には公表したのでしょうか?

・ここでの規定は、TPP協定における”保秘義務契約“の対象ではないと思いますが如何でしょうか?速やかに公表することを要請します。


2.17章「国有企業及び指定独占企業」10条:透明性
「協定発効後6ヶ月以内に国有企業の一覧を他の締約国に提供、あるいはウェッブサイトに公表する」としている。

〇対象となる事業体が明らかでなければその影響・効果を国会で審議することも出来ないはずです。このまま批准を求めるのはやはり立法府を無視したものと言わざるを得ません。速やかに公表することを要請します。

・また、ウェッブサイトでの公表を“あるいは”としているのは国民への透明性を二義的に考えていることを意味しており、交渉官同士の透明性でしかなく許せないことです。

・ここでの規定も所謂"保秘義務契約“の対象外と考えますが如何ですか?

・関連の質問です。
国有企業は広範な分野に広がっていますが、例として重要な機能を有する(独法)農畜産業振興機構と国立病院機構について、国有企業章の規制が適用されるかどうか説明を要請します。

いすれの法人も、利益を目的としていないというものの、業務報告書や財務諸表を分析する限り、業務の仕組みも経営の実態も"主として商業活動に従事“していると見るのが自然です。

〇この章の附属書Ⅳでは日本(シンガポ-ルは実質的な留保がされている)だけが留保をしておらず、他の国全てが、広範に渡る国有企業を例外扱いとしています。

日本が全く留保していないのは何故なのか説明を要請します。

(緒方林太郎衆議院議員による4点の質問主意書)

【面談報告】8/19実施「TPP交渉及び審議・検討における透明性」に関する再要請

私たち「市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会」は、2016年7月14日、 内閣官房TPP対策本部に「TPP交渉及び審議・検討における透明性」に関する再要請を行い、8月19日、内閣官房TPP対策本部と面談し回答を得ましたので、以下、報告します。

再要請内容の詳細はこちらから→ http://tpp-dialogue.blogspot.jp/2016/07/blog-post.html

※今報告は、内閣官房との面談内 容の報告であり、時間の都合上議論を深めることができなかったものの、参加団体よりいくつか異論が上がっている内容も含まれます。
内閣官房に参加団体より別途確認し、確認できたものを「追加質問」として、随時掲載いたします。


再要請にかかる内閣官房との面談報告

日時: 2016年8月19日(金)14:30より1時間程度
場所:   永田町中央合同庁舎8号館共用会議室

政府対応者:内閣官房TPP政府対策本部より 内閣参事官 矢田真司、参事官補佐 日笠紘

参加団体:TPPに反対する弁護士ネットワーク、主婦連合会 、自然食通信社、市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会


1.「TPP交渉及び審議・検討における透明性」に関する再要請について
全国実行委員会より、今回面談の経緯及び再要請の概要・ポイントについて説明を行った。

<経緯>
2015年11月、115団体の賛同を得て「TPP交渉及び審議・検討における透明性」に関して要請、面会にて回答を得た。臨時国会の前に、今回改めて再要請という形でこの場をいただいた。

<再要請のポイント>
①TPPに関する徹底した情報公開
・情報公開がどこまでされており、今後も対応できるか
・ネットでの意見受付が始まったことは歓迎するが「個別の質問には対応できない」と明記。市民からの疑問・問合せに恒常的に対応する常設の体制を要請。
・情報活用のために、スキャンではなく全てテキストで公開(テキストコピーも検索もできない)。

②TPPに関する誰でも参加できる政府説明会・対話の実施
大筋合意後の説明会開催について。全国開催及び、幅広い層が参加可能なものを実施するよう要請。

③TPPに関するパブリックコメントの実施について

④保秘義務契約について
保秘義務の内容を明確すること、日本政府側から各国に廃止の働きかけを要請。



2.TPP政府対策本部から、今回再要請への回答

①TPPに関する徹底した情報公開

・「丁寧な説明と情報提供」
基本的には「TPPの活用促進」を念頭にして記載している。経済産業省が、業界団体あるいは中堅中小企業など、個別に関係団体と協力して、事業者への相談体制としての窓口となっている。

一般市民の方々に、内閣官房としての丁寧な説明会の情報提供は非常に重要なことだと認識しているが、我々20数名程度と限られた人員なので、専門の相談窓口ということには人員的にも困難だ。内閣官房HPのQ&Aでは、よく寄せられる疑問点や誤解と思われる点を丁寧に説明しようという回答となっている。

質問を全て個別に対応するのは難しいので、意見受付フォームで意見をいただき、Q&Aを必要があれば拡充するという方向。(公開が)許される意見などをみながらHPに載せるなど含め考えていきたい。

・情報提供に関して
国会でもわかりにくいと指摘される。内閣官房や各省で作ったものなど含めて、できるだけ載せようとやってきている。現在の情報提供の中身ややり方がベストということでもないので、ご意見をいただくなかで改善に努めていきたい。

スキャン資料について、紙で出してほしいとの要望があって各省から紙でもらったものを内閣官房で集めた。民進党に提出した資料と全く同じもの。紙や電子媒体バラバラの形式で集め、スキャナをかけてそのままHPに載せている状態。電子媒体にすると手間がかかるので、どこまで対応できるか分からない。


②TPPに関する誰でも参加できる政府説明会・対話の実施

・説明会について


内閣官房主催で、各省庁が集まった説明会は6回開催した。それ以降は農業関係・中小企業・商工関係団体を中心に、農水省・経産省中心に全国各地で約300回開催と、国会でも報告している。

内閣官房でもたとえば商工会議所などの、いろいろな関係団体、消費者団体関係、農業者関係主催のなどの会に、呼ばれれば個別に可能な範囲で出席し説明している。可能なものについてはやっていく。

地方での説明会は、内閣官房が単独で実施することはできないが、各都道府県には声掛けしている。要請があり日程が合えば行う。

内閣官房で、TPP協定の全体について説明できる人間が限られており、内閣官房主催となると全国説明会と同様に、各省庁参加になる。

むしろ農業、商業、工業などだと分野を区切り、関心あるテーマに絞って農水省、経産省に働きかけて実施する形でやっており、それも含めて丁寧な説明としている。


・説明会の公開について

澁谷審議官の全体説明会の様子はyoutubeにアップしている。内閣官房主催のものはメディアに開放しているが、内閣官房主催以外のものについては把握していない。


③TPPに関するパブリックコメントの実施について

行政手続法に基づいてのパブリックコメントにおいて、条約や法律案というのがパブリックコメントの対象にはなっていない。条約というのは外交交渉。条文が固まっているので、パブコメでご意見を頂戴しても中身の修正の余地がない。
法律案に関しては、その後に国会という形できちっと手続きをやるので対象にはなっていない。対して政令省令は機会がないと言うことで対象になっている。

ただし、幅広い意見募集というのはHPのフォームからいただいてもいいし、意見を全く聞かないというわけではない。電話でご意見をいただく場合もある。

パブコメについては、webサイトの意見受付フォームに書いていただいても電話でも受け付ける。

「Q&A」はこちら⇒ http://www.cas.go.jp/jp/tpp/qanda/index.html
「意見」はこちら⇒ https://www.kantei.go.jp/jp/forms/tpp/tpp_goiken.html

法律上のパブコメではないと言う意味でパブコメは実施しないと話したが、国民の意見というものに対応すべきものというのが基本的な考えだ。


④保秘義務契約について

保秘契約に沿って、公表できるものは公表するスタンスで対応してきている。
ただし交渉経緯に関しては、公開できない。「保秘契約そのものを明らかにしない」ということが交渉参加国の共通理解、総意ということである。

ニュージランドで雛形というものが公表している。それが、保秘契約そのものだとは参加国の総意で申し上げられないが、おおむねそれが保秘契約の中身だとご理解いただきたい。

保秘義務契約の廃止については、保秘契約に基づいて交渉開始段階から各国と信頼関係を持って積み重ねてきているので、わが国から一方的に破棄することへの働きかけは考えていない。


3.政府回答に対し、質疑応答

■過去の説明会や今後の開催

全国実行委員会:農水・経産省説明会の300回の内容は、説明会で開催した場所や対象など、リストとして情報公開されているか?
公開されたほうが、市民の関心を喚起し、個人参加の機運が高まる。

説明会実施の要請の主体は、厳密に県でないとダメなのか?柔軟な形で、今も対応できるものには対応するという姿勢は継続しているという理解でよいか。


日笠参事官補佐:どこの省庁が何のテーマでやったのか、説明会のリストはHP上に載せている(分かりにくいと指摘した資料の中に)。

吉田参事官:ご指摘を受けて資料のリストは作りたいと思った。

矢田参事官:消費者団体や千葉の銀行だったり商工関係だったり、県庁に限ったことではない。県庁は受け入れ態勢、規模、営利目的ではいけない等の条件を考慮しての理由から。あとは幅広く関係団体、消費者団体なども念頭に入れている。

主婦連合会:消費者庁は「説明会は大事です、開きます」といっていたのに、音沙汰なしだ。食の安全の部分の説明会だけ。

全国実行委員会:2012年~13年にかけて、わたしたち実行委員会主催で、関連省庁が参加した平場の意見交換会を3回実施した。政府側からの一方的な説明ではなく、パネル形式でやりとりをする進め方で、かなり評判がよかった。そういう形式での開催はどうか。

吉田参事官:その大阪の会にはわたしも参加した。そういう意味では、我々も全然意見を聞きたくないわけではない。聞きたいのは山々。機会があればいく。

全国実行委員会:説明会に関しても物理的な体制の問題はあるにしても、窓口は開かれているということですね。


■意見聴取・分かりやすい説明について

全国実行委員会:その上で、オーストラリアやニュージーランドでは、署名が終わってからかなり丁寧な聞き取り(コンサルティング・プロセス)で、積極的に意見聴取をしている。
しかし今日の話からは、前向きな積極性というものが感じられない。

主婦連合会:聞かれたらお答えします、ということが多い。
経産省だとTPPを使った成長の支援ということだが、「大丈夫、変更はない、心配しないでくれ」と説得ではなく、市民からすれば「普通の暮らしにどう影響するのかな」と思う。今秋に決まるとなると、後から「こういうことだったの?」となるのでは。


吉田参事官:(我々が)変わりませんというから不安があるのかも。「何が変わるのか」ということを説明したほうがいいのかもしれない。


全国実行委員会:Q&Aでも、かなりざっくりと答えている。もう少し丁寧に、自分が聞きたいことへの回答が分かる、検索ができるといった状態での公開を、引き続き検討していただきたい。

参事官側:(うなづく)

全国実行委員会:市民の疑問や懸念に答えるには「心配ない、安心だ」という説明ではなく、その判断の根拠となる条文や付属文書の箇所を示してほしい。そこは今も対応されていない。



■保秘義務契約

全国実行委員会:
保秘義務契約そのものをオープンにできない理由が理解できない。外交だからと盾に使われている。外交交渉に秘密は必要な局面があるといわれるが、すでに提示された情報をオープンにしてもいいのでは。

矢田参事官:相手国だけがみているわけではない。それが最終確定していれば別だが、交渉途中の具体的な留保リストを出すことで、わが国にとって不利な情報を見せることになるかもしれない。
他の交渉、例えば日EUのEPA協定交渉への影響があるということだ

全国実行委員会:交渉における基本的なスタンスがきちっとしていれば、逆に他の協定についても「あくまでこれは守るのだ」という姿勢にどこまで立てるのかがはっきりする。柔軟性も求められる協定交渉もあるだろうが、基本をどこにおくのか、国民における透明性が結果的に欠けてくる、という問題としてとらえている。

吉田参事官:結果として合意されたものは、自国にも他国にもオープンにしている。
全国実行委員会:結果が公表されるのは当然だ。


■食の安全

全国実行委員会:
外国企業側からクレームをどんな仕組みで受け付けるのか。

矢田参事官: TPPによって、急に新しい意見聴取の場を作る、といったルールができるのではない。ルールは変わっていない。

TPPに反対する弁護士ネットワーク:TPPではWTO以上のものがあると思うが、一歩進んだものの具体的なものはなにか。利害関係者が意見を言ってくることが今後増えるのではないか。

矢田参事官:基本的にこれまでと同じ。皆さんには見えてないが、政府が規制の対象関係者に、意見を聞かずに進めることは通常はない。

協定文には、利害関係者に意見を聞かねばならないとあちこちに書いてある。それを実施することによって疑問は満たされたことになる、つまりパブコメを続けていれば意見を聞いたことになる。すでに日本政府がやっていること、今までと同じだ。

吉田参事官:基準の水準が変わると言うのではなく、各国がこれまでやっていなかった情報が出てくるようになる。日本はすでに対応済なので、変わらない。

特にSPS協定については、一番不安なのは外国の基準に引き下げられるのではということだろう。外国の基準に近づけられることなど、そういう圧力がかかるのではないかという不安があったが、それは杞憂であると言っている。

今も「科学的根拠」に基づいた規制ができる。科学的根拠かどうかというのが、最後の争点になるが、TPP協定で、「科学的根拠」かどうかは、紛争処理手続きが使えない。ISD対象にならないので、WTOルールで判断となる規定になっている。

つまり、最後の判断は紛争解決の対象にはならないので、TPPだからWTOのSPS協定よりも基準が緩められるとか、そういうことはありえない。そうした意味で最終的な基準は変わらない。TPPでは、その前の段階《情報は渡しなさい、協議に応じなさい》というところは対象になっておりそこは変わっている。


追加質問(再要請後、追加で事前質問し回答を得た

■25章「規制の整合性」

3条「各締約国は、協定発効後一年以内に自国の対象規制措置の範囲を決定し公表する」としている。
〇国会審議開始前に公表すべきと考える。国会議員には公表したか?

矢田参事官:あくまでも訓示的な規定。当たり前なことを書いてあるだけ。確かに「自国の対象規制措置の範囲を決定し公表する」とあるが、まだ公表されていない。

1年以内にということなので、それに向けて作業し公表するが、国会議員にも国会審議前に公表することは現時点では考えていない。

全国実行委員会:規制の整合性は、かなり分野横断的で重要だと私は認識しているが、今の政府の立場は国内外無差別であると、限りなく規制は内外整合するということか

吉田参事官:内外ということではない
矢田参事官:外国と揃えようという章ではない。

全国実行委員会:しかし限りなく「国際慣行に即した」という形で条文自体は強調されていると思うが。

吉田参事官:たとえば先進国、日本を含めて、もうすでに国内に規制が齟齬をきたさない体制や、一般に明らかにする、という点もすでに対応できている。しかし、まだできてない国があるため、良い例を共有し、よりよくしていきましょうということです。

全国実行委員会:国内における規制間の整合性ということか。

吉田参事官:国際間での規制の整合性ではなく、国内における規制の整合性です。


■17章「国有企業及び指定独占企業」10条:透明性

「協定発効後6ヶ月以内に国有企業の一覧を他の締約国に提供、あるいはウェッブサイトに公表する」としている。国有企業は広範な分野で多岐にわたり、かつ国民生活に影響を与える点も多い。どういった企業が対象になるかが明らかにならないと。

矢田参事官:これについては質問主意書が緒方林太郎議員(民進党)から出され、公開されている。

全国実行委員会:国会審議で内容のある審議が可能か。どういう影響が出るかがみえないまま、審議が進み、批准に進むことに抵抗がある。

国有企業のあり方が、一般論としては章の中に書かれているが、Q&Aでも日本語の文章があいまいで「利益を志向していない独立行政法人は対象になりません」とある。

独立行政法人だから対象ではないのか、利益を志向していない法人なのか、ポイントが明らかでない。

各国の自由貿易協定の研究家との議論の中では、「欧米の目で見ると、実質的なところで見ていく」という声が多い。

(独法)畜産産業振興機構、(特定独法)国立病院機構など、財務諸表や報告書を見ると、目的としては利益を志向していなくても、実態としては利益を追求する志向だ。実質であれば対象になるのではという懸念がある。

例として重要な機能を有する、この農畜産業振興機構と国立病院機構について、国有企業章の規制が適用されるか。

吉田参事官:結論から言うとご懸念の2法人は対象ではない。

11社は、郵政関係の日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、日本政策投資銀行、鉄道関係で北海道・四国・九州・日本貨物鉄道、東京メトロ、成田空港、新関西空港が現時点で我々は国有企業の対象となると報告している。(詳細は、以下質問主意書画像参照)

 

全国実行委員会:質問主意書を出せば公表するが、出さないと公開しないと言う意味か?

吉田参事官:もともと固まってない段階だったので公開していなかった。
発効後6か月でに決まるとなっているが、まだ発効していないので、現時点で国有企業を上げるとすれば、この11社ということ。発効後はこれも変わっているかもしれない。発効後に作業して期間を区切って報告する。

なぜ実際の発効時点にならないと定まらないか、例えばゆうちょ銀行などの郵政関係は、株を売却していく予定があり、「50%切ってしまうと対象外」になってしまう。

そういう前提が崩れる対象もある。特に2社についてはそう。この会社のそもそもの株式構成が変わってしまうためで、規定外だからじゃなくて、現時点では、というのはそういう意味だ。

全国実行委員会:今の話はよくわかった。協定に合えば自動的に対象になるならば、他の事でも情報公開できることがあるのでは?

全国実行委員会:国有企業章の付属書Ⅳの各国版の留保に目を通したが、留保を挙げていない日本と相当に多数の留保リストを載せた他の10ヶ国(シンガポールを除く)とで、大きな落差を感じた。

Q&Aを読んでいても、大丈夫だという文脈ばかり
協定の内容を、どう悪どく利用するかという立場で条文を読んでいくと、書かれている脈略は一貫して市場開放を進めようとする立場にとって使える条項があると感じる。Q&Aはスペースの問題もあるだろうが、非常に不十分だと感じる。不安は解消されない。

予防原則という目線で条文を読むと、予防原則は限りなく否定しやすい条文に読めてしまう。
私が渉外弁護士だったらどう読むのか、ばかり考えて読んでいる。
全国実行委員会:今後も面談を続け、みなさんと考えていきたい。

以上
(文責:市民と政府のTPP意見交換会・全国実行委員会)



【面談後の追加質問報告を以下に更新します】

・8月19日付「7月付要請文に関蓮する追加的質問について」のTPP政府対策本部との面談概要報告
http://tpp-dialogue.blogspot.jp/2016/09/blog-post.html